有機化合物の分離

抽出

多くの有機化合物は水に溶けにくく,有機溶媒に溶けやすい。そこで,芳香族化合物をエーテルやヘキサンなどの有機溶媒に溶かしておく。そこへ,酸,塩基の水溶液順次加え振り混ると,特定の成分だけが中和され,塩(酸からの陰イオンと塩基からの陽イオンからなる)になり,有機溶媒層から水層へと転溶する(塩はイオン結合性なので有機溶媒に溶けず,水によく溶ける)ので,分離が可能となる。このように特定の成分だけを分離する方法を抽出という。抽出には分液漏斗という器具が使われる。

 

分液漏斗

 互いに混じりあわない2種の液体を分離するときに用いられる。

 
 

抽出に用いる有機溶媒は,密度が1.0g/cm3以下のものは水の上に,1.0g/cm3以上のものは水の下にくる。 

 

有機化合物の分離

 有機化合物は酸性物質・塩基性物質・中性物質に分けられる。このうち,中性物質以外は酸・塩基と中和反応を起こす。すなわち,有機化合物の混合物中に塩基性水溶液を加えると,混合物中の酸性化合物だけが塩基と中和反応をし,塩となって水層に移る。水層を取り除き,残った有機溶媒層(このとき,中性物質と塩基性物質のみが残っている)に酸性溶液を加えると,混合物中の塩基性化合物だけが中和されて,水層に移る。さらに,水層と有機溶媒層を分ければ,酸性物質・塩基性物質・中性物質を分けたことになる。

 

酸性物質 ・・・ スルホン酸(ベンゼンスルホン酸など),カルボン酸(安息香酸など),フェノール類(フェノール,クレゾールなど)

フェノール類は炭酸よりも酸性が弱いので炭酸水素ナトリウム水溶液を加えても塩にはならない。

塩基性物質 ・・・ アミン(アニリンなど)

中性物質 ・・・ トルエン,ニトロベンゼンなど

下の図はフェノール,安息香酸,アニリン,ニトロベンゼンの混合物から,各化合物を分離する手順を示した物である。(1)〜(4)の物質を考える。

 
 

例題

アニリン,サリチル酸,ニトロベンゼン,フェノールの混合物について,図に示すような分離操作を行った。

1)各溶液AD中に存在する化合物adの構造式を記せ。

2)化合物cdを分離する際,二酸化炭素を吹き込む代わりに塩酸を用いた場合,化合物cdは分離できるか。理由をつけて答えよ。